2025年度研修会を開催しました

日本語教師養成・研修推進拠点整備事業(中国・四国ブロック)として、2025年9月13日(土)に研修会「中国・四国ブロックにおけるこれからの実践研修を考える」を開催いたしました。

第一部では、講演会(対面&オンライン配信のハイブリット形式)を行い、
第二部では、ディスカッション(対面)を実施しました。

第一部 講演会「初等教育教員養成における教育実習を通じた実習生の学びと成長」

前半は、米沢 崇 氏(広島大学 人間社会科学研究科 准教授)をお招きし、「初等教育教員養成における教育実習を通じた実習生の学びと成長」というテーマでご講演いただきました。

講演では、広島大学の教員養成課程における教育実習について、「教育実習の必要性や位置付け」、また、「実習生の学びや指導教員との関わり」についてお話しいただきました。日本語教員養成課程における教育実習を考える上で必要な観点もきわめて多く、他領域から学ぶことの重要性を改めて認識することができました。

第二部 実践研修に関するディスカッション

後半は、日本語教育今後の実践研修、特に各機関における実践研修の現状と課題について
ディスカッションを行いました。

交流会には大学教員や現役の日本語教師のほか、日本語教育専攻の大学院生が参加し、
参加者それぞれの立場から情報共有や意見交換が行われました。

ディスカッションの概要
 ディスカッションでは、各地域における日本語教育実習に関する話題が多く取り上げられました。地域ごとに実習の機会や環境に差があること、実習先の確保の困難さや教材の違い、養成機関と実習機関との指導方法の調整など、具体的な課題について意見交換が行われました。課題として以下のような声が聞かれました。

○日本語教員養成機関が県内に存在しない。そのため、たとえ国家試験に合格したとしても、教育実習を行う場がなく、資格取得まで進めないケースが多い。日本語教育に関心を持つ人材がいても、地域内で完結できないため、資格を取得するためには県外に出ざるを得ない。その場合、交通費や宿泊費といった費用がかかることも問題である。

○日本語教員養成機関はあるが、実習先の確保が難航している。現在、複数の実習先があるものの、それぞれ使用している教材や授業方針が異なるため、学生が実習に臨む際に共通の基準を持ちにくい。さらに、実習先との連絡・調整も容易ではなく、受け入れ体制の整備が十分ではない。

○日本語学校としては、即戦力となる教師を確保したいというニーズがあるが、制度的・地域的な制約によって十分に人材を取り込めていない。実習環境の不足が、結果的に人材不足を深刻化させている。

○国家試験ルートで資格取得を目指す人材に対して、教育実習の機会を提供する仕組みを整える必要がある。

○海外の事情に関して、例えばベトナムでは、日本語指導についての理論的な科目を履修していても、実際に日本語を教えた経験がないという課題がある。海外においては教育実習を行う場そのものが不足しており、実践的な指導力を身につける機会が限られていることも問題である。

○講演で紹介された小学校教員養成に比べて、日本語教員養成における実習は時間数が少ない。

○日本語教師は単に日本語を教えるだけでなく、渡日前後の生活指導も求められているため、実習の段階から日本語の内容にとどまらず、生活に必要な知識も取り入れるべきである。

 上記の内容に加え、ディスカッションでは、講演会の内容である「フィードバック」に関連する話題も取り上げられました。具体的には、フィードバックの仕方や、母語話者教師と非母語話者教師のフィードバックの違いなどについて議論がなされました。さらに、日本語教員養成課程の修了者のネットワークや地域間を越えたネットワークをどのように形成・維持していくかということや日本語教師志望者のモチベーションを持続させるための工夫や支援の在り方についても活発に意見交換が行われました。

温かい雰囲気の中、研修会を終えることができました。
次回のイベントでも、皆さまとお会いできることを楽しみにしております。